私は30年以上のトレーダー歴がありますが「米国経済指標」を活用したトレードが非常に効果的であると強く実感しています。
そもそも各国に数々の経済指標がありますが、中でもマーケットに大きな影響を与えるのが米国の経済指標だと言われています。
例えば、こちらの動画は以前の米国経済指標発表のタイミングを狙ってトレードをした時の映像です。
見ていただいて分かる通り、米国経済指標発表時は大きく動くタイミングであり、上手く活用することさえできれば大きな利益を生み出すチャンスとなります。
米国経済指標発表後には、通貨の価格が100pip~200pipもの動きを見せる指標もあります。このタイミングを上手に捉え、活用することでトレードの精度を高め、利益をぐんとあげるきっかけを掴むことができるでしょう。
そこで今回は、そのチャンスをトレードに活かせる米国経済指標を7つ抜粋し、その重要性や捉え方、活用方法を画像など交えて紹介していきます。どの経済指標を見て、どのように活用すれば良いのかがご理解いただけると思います。
特にFX初心者の方にとっては非常にためになる話だと思います。ぜひ参考にしてみてください。
1.これだけは押さえておきたい経済指標7つ
米国の代表的な経済指標7つ実際のチャート付きで紹介します。
7つの経済指標その中でも特に「政策金利(FOMC)」が重要です。なぜなら政策金利の高い通貨を買うと、金利が付くという理由から買われるからです。それを頭に入れたうえで以下の内容を読んでみてください。
1.政策金利(FOMC)
(各チャート共通事項 矢印位置が経済指標発表時)
FOMCは米国の金融政策を決定する会合。日本では「日銀金融政策決定会合」で金融政策を決定しており、それに当たるものがFOMCです。
年8回開催で約6週間ごとに開催されます。景況判断と政策金利の上げ下げなどの方針が発表され、その結果が市場の予想とは違った時、為替レートが大きく変動し、世界の金融マーケットにも大きな影響を及ぼします。今後の米国の金融政策を予測する上で欠かせないものとなっています。
2.米国雇用統計
アメリカの雇用情勢を示す統計で、景気状況を探るための最も重要な指標のひとつです。毎月第1金曜日にアメリカ労働省から発表されます。
雇用統計の中で特に「非農業部門雇用者数」「失業率」この2つが予想より良い数値が出るとアメリカの経済が順調に推移していると見られ、景気が良いと判断されます。月末から米国雇用統計の発表まで、相場に影響を与える様々な経済指標に注目が集まるので、色々な情報をチェックしておきましょう。
3.ADP雇用統計
ADP雇用統計とは米国雇用統計の発表される二営業日前の水曜日に発表され、米国雇用統計が予想出来る統計として注目されています。
ADP雇用統計の数値は、米国の給与計算などの大手代行会社である、ADP(Automatic Data Processing, Inc.)社のデーターを利用して全米の非農業部門雇用者数の予測をするために開発された数値です。 しかし、2006年5月からの開始と歴史が浅く、雇用統計の数字と乖離があるケースもあることから過信には注意が必要です。
4.ISM非製造業景況感指数
全米供給管理協会が算出する非製造業の景況感を示す指数。毎月第3営業日に発表されます。
内容はアメリカ全土にある製造業以外の業種の景況感アンケート結果を集計して指数化したものです。
指数は0から100までのパーセンテージで表し、50%を景気の拡大・後退の分岐点として、50%を上回ると景気拡大、逆に50%を下回ると景気後退を示します。
5.CPI
CPIとは米国消費者物価指数の事で、米国労働省が毎月15日前後に発表します。全米の人口の多くを占める都市部の消費者が平均的に購入する商品やサービスを固定して、物価がどのように変化しているかを指数化したものです。
CPIが上昇していれば、物価が上昇していることになります。物価が上がれば、金利も上がり、売り上げも賃金も上がりインフレの傾向になっていることになります。
逆にCPIが下がれば金利も下がり売り上げ、賃金が下がる事になりデフレの傾向になっていることになります。
よってCPIはインフレやデフレの度合いの判断に使われます。
6.中古住宅販売件数
米不動産業者協会が毎月25日に発表する住宅指標。地域別に(北東部、中西部、南部、西部)の中古一戸建て住宅の販売件数、販売価格、在庫が発表されます。
中古住宅販売は、新築住宅販売に比べ約6倍の規模を誇るため、住宅指標としての注目度が高いです。中古住宅販売件数は新築住宅販売件数と同様、景気動向に対して先行性が高いと言われています。
7.GDP成長率
経済成長率を表す指標として使われ、各四半期最終月の4週間後に発表されます。一定期間内に生産される付加価値の国内総生産量が前の期と比較して、何%変化するのかを予測したものです。生産面、分配面、支出面のいずれから国内総生産を計測することが可能です。
「速報」「改定」「確定」と3つの数値が発表されますが、中でも「速報値」が一番注目度が高いです。
2.なぜ、経済指標を見る事が必要なのか?
指標発表によって通貨の値動きが非常に大きく動くことがあるからです。
ですから、あらかじめ経済指標発表日時を調べることによって、トレードの新規ポジションを持つチャンスや、反対にポジションを閉じるチャンスに恵まれる機会があるからです。
ここではユーロドルのチャートを用いて大きなファンダメンタルが上向きの状況の時に小さなファンダメンタルである経済指標の結果によってチャートが上に動いたケースと下に動いたケースについて解説します。
2-1.ファンダメンタルの種類
ファンダメンタルには「大きなファンダメンタル」と「小さなファンダメンタル」の2種類があります。
*ファンダメンタルとは、簡単に言えば直近の経済情報のことです。
大きなファンダメンタル
大きなファンダメンタルとは、その時の世界中の大きな経済の流れのことを指します。
例えば2001年に米国で起きた「9.11」事件などです。
この事件によって資産をドルで持っていることへの危機感が世界中に広まり9.11事件以降約7年間に渡ってドルが売られ、ユーロが買われてユーロドルは約7年間上昇しました。
実際のユーロドル月足チャートです。
このように大きなファンダメンタルの流れによって大局の方向が決定づけられてテクニカル的にもアップトレンドが発生します。
小さなファンダメンタル
小さなファンダメンタルとは、経済指標の結果や比較的経済への影響力が小さいニュースや情報などのことを指します。
例えば雇用統計の結果が良かった場合、通常であればドルが買われてユーロドルは下降するのがセオリー通りの動き方ですが、反対方向に動き上昇する場合もあります。
なぜでしょうか? それは小さなファンダメンタルである経済指標結果を理由に大口投資家が売買の理由として利用するからです。
2-2.経済指標結果とユーロドルの動き4つの組み合わせケース
4つのケース
小さなケースに分けることが出来ます。
具体的には以下の4つのケースがあります。
図A
ケース1
米国経済指標結果が良かった時にユーロドルが上昇したケース
この場合はドルが売られてユーロが買われて、経済指標結果と反対の動き方だと判断することができます。
これは、経済指標結果をユーロドル買いのきっかけにしたと判断することが出来ます。
ケース2
米国経済指標結果が良かった時にユーロドルが下降したケース
この場合はドルが買われてユーロが売られて、経済指標結果通りの動き方だと判断することができます。
これは、経済指標結果をユーロドルの利益確定のきっかけにしたと判断することが出来ます。
ケース3
米国経済指標結果が悪かった時にユーロドルが上昇したケース
この場合はドルが売られてユーロが買われて、経済指標結果通りの動き方だと判断することができます。
これは、経済指標結果をユーロドル買いのきっかけにしたと判断することが出来ます。
ケース4
米国経済指標結果が悪かった時にユーロドルが下降したケース
この場合はドルが買われてユーロが売られて経済指標結果と反対の動き方だと判断することができます。
これは、経済指標結果をユーロドルの利益確定のきっかけにしたと判断することが出来ます。
注意事項として、EURUSDを例に記事を書いていますが、AUDUSD,GBPUSD,NZDUSD,などのドルストレート通貨は同じ見方ですが、USDCAD,USDCHF,USDJPYの通貨は逆向きで考えてください。
3.米国経済指標を利用したトレードの活用方法
3-1.経済指標の特性
経済指標発表時は、大口売買のきっかけに利用されることが多いという特性を利用して個人トレーダーも大口売買と同じ方向にトレードをすればトレードのチャンスとして利用することができます。
3-2.経済指標を利用したトレード方法
経済指標の特性を利用したトレード方法は大きなファンダメンタルの方向と小さなファンダメンタルの方向が合った時だけその方向にトレードするという方法です。
具体的には、大きなファンダメンタルが上向き状態の時には図Aのケース1とケース3のように大口投資家が経済指標結果を買いのきっかけにした場面では買いで入ります。
反対に大きなファンダメンタルが下向き状態の時には図Aのケース2とケース4のように大口投資家が経済指標結果を売りのきっかけにした場面では売りで入ります。
つまり、大きなファンダメンタルのトレンド方向と小さなファンダメンタルの方向がそろった時に大口投資家の動きに乗ってトレードするのが経済指標を活用したトレード方法となります。
まとめ
米国経済指標の結果を見て上がるはずだ!とか下がるはずだ!と判断してトレードをしてしまう方は多いのではないでしょうか。
実際にその通りに動く時もあれば反対に動いてしまう時もあり、理由が分からないまま困惑してしまった経験があると思います。
しかし、この記事を読んで仕組みと利用方法が分かれば今後は大いに経済指標発表時のトレードに活かすことができると思います。
テクニカル分析にも大局と小局があるように、ファンダメンタル分析にも大局と小局があることを肝に銘じておきましょう。