環境認識と手法の違い

環境認識と手法の違い

FXで裁量トレードをしている人に必ず必要となるのが「環境認識」と「手法」です。

ただ、これら二つの違いをなんとなく分かっていても明確にたて分けられる人は少ないのではないでしょうか。

では何がどのように違うのか?
それはトレードにおける「役割」です。
手法とは「エントリータイミングを計る為の物」になります。
それに対して環境認識は、チャート全体から相場状況を読み取り、損小利大のトレードが可能となる「方向と位置を探し当てる為の分析作業」のことです。

つまり、環境認識によって最も優れた損小利大のポイントを見つけ出し、手法を使ってタイミングを計りエントリーすることが最上級のトレード方法ということになります。

ここでは実際のチャートを例に、手法と環境認識の違いを具体的に解説していきます。

1. 環境認識と手法の違いはトレードにおける役割です

環境認識による相場分析と、手法によるエントリーの2つがそろって初めて本当の裁量トレードと言えます。しかしトレードにおける重要度は同じではなく、比率で言えば環境認識9に対し、手法は1ほどです。手法を生かすも殺すも環境認識と言うバックボーン次第と言う事です。そこで「手法のみ」のトレードと「環境認識+手法」のトレードではどのように違うのかを次項で解説していきます。

1-1.手法だけの実例

環境認識をせずに手法だけでエントリーを考えたトレード方法では、かなり不利なトレードになることが往々にしてあります。

なぜなら手法だけの場合は、ロングかショートかのエントリー方向がいつも合っているとは限らないからです。

GBPUSD 2018年8月2日BOE政策金利発表の日の例をもちいて解説します。

BOE政策金利発表前後の時間帯でポンドの15分チャートでエントリーを考えた場合です。

GBPUSD 2018年8月2日15分チャート aとbの拡大図

ロング方向はA、Bの2箇所が考えられます。

A: 指標発表と同時に上昇とトリプルボトムの理由からロング

B: BOX圏ブレイク

2018年8月2日gbpusd 15分チャート CとDの位置記載 cとdの拡大図

ショート方向はC、Dの2箇所がかんがえられます。

C: 15分足はらみ線安値切りブレイクショート

D: それまでの最安値サポートブレイクショート

エントリーは、ロングとショートで合計4箇所のエントリーが考えられます。

aとbの解説図

それぞれのエントリー位置から利益確定を考えた場合、ロング方向のAとBはかなりタイトな値幅位置と時間帯で利益確定しないとロスカットになってしまいます。

cとdの解説図

反対にショートでエントリーしたCとDでは、翌日以降持ち越しをすればかなり広範囲な値幅と時間帯で利益確定が可能です。しかも含み損を持つこともありません。

なぜこのような差が出てしまうのでしょうか。

一番の要因は環境認識にあります。

1-2. 環境認識の実例

環境認識をすることにより、最良の損小利大トレード可能なポイントを見つけ出すことができます。

なぜなら、環境認識の作業によって月足という大きな流れの状態から15分足などの小さな流れの状態まで全ての流れの状態を見ることによって、急流になりそうなポイントを見つけることができるからです。

環境認識ですること

環境認識では以下の項目をチェックしていきます。

ア:月足、週足、日足それぞれのサポレジ、トレンドの向き、プライスアクション

イ:日足未満のタイムフレームのサポレジ、トレンドの向き、プライスアクション

実際に2018年8月2日GBPUSDの環境認識を順を追って見てみましょう。

2018年gbpusd 月足チャート

A:月足はダウントレンドで水色のレジスタンスゾーンで跳ね返されて3波下降中です。

2018年gbpusd 週足チャート

B:週足も水色のレジスタンスゾーンで跳ね返されてWトップのネックを切りダウントレンドで3波下降中です。

2018年gbpusd 日足チャート

C:日足は前日の8月1日時点でダウントレンドで3波下降中です。

トレンド解説図

D:これらの状況を総合すると、月足、週足、日足の全てでダウントレンドの3波で下降中という状態です。

このためロングよりもショートの方が圧倒的に有利と判断することができます。

gbpusd 8月2日1時間足チャート

E:ショート方向が有利であることを踏まえて次に1時間足を見ていきます。8月2日に入ってから環境認識の一環作業として、前日の安値と終値にラインを引きました。

gbpusd 8月2日15分チャート

F:そして15分足では2018年8月2日の経済指標発表と同時に上昇しましたが、すぐ上に前日終値というレジスタンスがあったため、ローソク足パターンのはらみ線が完成しました。

G:この時、はらみ線の安値(青ライン)を切れば下降体勢に入ったと判断し、1時間足の下降3波発生の確率が高いと考えます。

gbpusd 8月2日以降の15分チャート

結果は、確率的に高いと考えていた1時間足の下降3波が発生しました。

H:その後の下降でCやDを切ったのでブレイク手法を使用してCラインのブレイクエントリーとDラインのブレイクエントリーが可能です。

CとDのラインを切ったあとは、環境認識の流れ通り急流下降でした。

1-3. 手法と環境認識の目的の違い

環境認識をすることによって手法だけでは引けなかったラインから損小利大のトレードが可能となります。つまり、手法だけでは入れなかったポイントからのトレードも可能になるということです。

aからeまでの記載図

なぜなら、ここまでの環境認識を総合判断すると、AとBでロングするのは、かなりリスクが高く狙える値幅も少ないことが分かります。

反対にCとDからショートで入るのはリスクも少なく損小利大のトレードをするには絶好の場面だということが分かります。

さらに環境認識をしたことにより手法だけでは分からなかった前日高値ラインも引くことができました。この1本のラインが引けたことによりC、Dよりも有利なE付近からショートで入ることも可能となります。

gbpusdのaとbとcの記載図

またケースによっては、ほぼヒゲの範囲からショートで入ることも可能です。

その根拠として、A付近で前日終値より上に上昇したにもかかわらず、その後失速してB付近でサポレジ転換が起こり下降しています。ここで、このレジスタンスはサポレジ転換後は強いと考えられます。 当然C付近でもB付近と同じように跳ね返る確率が高いと判断することができます。

gbpusd 1分足のはらみ線記載図

その要因の一つとしてC付近の1分足を見るとはらみ線が完成しており、その後の動きを見ても赤丸付近ではらみ線の陰線を越えられずに失速下降しています。このことからも下降の可能性が高いことが分かります。

このように手法と環境認識ではその目的が異なります。

テーブルと皿の例えで言えば環境認識がテーブルの役目で手法が皿の役目です。テーブルがあってこそ皿が乗っかることが出来るのです。皿だけ(手法単独)ではあまり役には立たないでしょう。

つまり環境認識をすることにより損小利大の絶好のポイントを見つけ出すことが出来ます。

1-4. 勝てる損小利大トレード行程の内訳

今回の1-2で解説したGBPUSDショートトレード工程AからHの行程を割合で分けると約8割から9割は環境認識の作業行程で占められています。

環境認識と手法の割合図

手法が実行される行程は最後の1~2割程度です。しかも、環境認識という下地があってこそブレイクCとブレイクDは活かされることが出来ました。このように、手法の行程は少なくその重要度も低く環境認識の下地がなければ手法の本領は発揮されないと思いませんか。

1-5.環境認識による損小利大トレードの映像

Youtubeの映像

映像の内容について解説します。

こちらはユーロドルの15分足チャートです。

eurusd サポートから反発狙いの買いトレード計画の解説図

1:サポートから反発狙いのロングトレード計画

環境認識により入る方向はロング。

注目するサポートは1.1205付近のサポートが候補となってました。

eurusdの2から4までの解説図

2:環境認識作業によりあらかじめ引いた反発する確率の高いサポートに注目していました。

3:ブレイク失敗の動きで少なからずヒゲを出し始めたのでブレイク不発と判断。

4:ブレイク失敗からN字上昇に向かうと思い、すぐにロングエントリーでした。

eurusd エントリー後のチャート

その数分後には陽線になり、含み損の持ち時間はわずか数秒でした。

私の知っている限りでは、陰線の途中でロングできる手法など聞いたことがありません。 せいぜいロング出来るのは、陽線になってからのレジスタンスをブレイクするAラインです。

つまり手法だけでは入るポイントには限界が有るということです。

しかし、環境認識を駆使すれば手法だけでは入ることの出来なかった絶好の損小利大のポイントからロングすることが可能になります。

これはポンドドルの15分足チャートです。

gbpusd サポートからWボトム反発狙いの買いトレード計画の解説図

1:注目サポートからWボトム反発狙いのロングトレード計画

環境認識により入る方向はロング。

注目するサポートは1.5688付近のサポートが候補となってました。

gbpusd 2から4までの解説図

2:環境認識作業によりあらかじめ引いた反発する確率の高い1.5688サポートに注目していました。

3:ブレイク失敗の動きで長ヒゲを出し始めたのでブレイク不発と判断。

4:ブレイク失敗から急角度のWボトム上昇と判断してすぐにロングエントリーでした。

gbpusd エントリー後のチャート

その数分後には陽線になりました。ポンドドルもユーロドルと同じように手法を駆使してロングで入れるのは、陽線になってからのレジスタンスをブレイクするBラインです。

ユーロドルのケースと同じようにポンドドルのケースも手法だけでは限界が有るということです。

つまり、手法と環境認識を比べた場合、ポテンシャルが圧倒的に高いのは環境認識という結論を出すことが出来ます。

2. 環境認識+手法=最強の損小利大トレード

環境認識で損小利大のポイントを見つけ出し、手法でタイミングを計って入るトレードが最強の損小利大トレード方法と言えます。

なぜなら、手法とはチャート上のごく限られた範囲の中でエントリーするタイミングを計る為の物です。ですから、どんなに優れた手法であっても入る方向が違っている場合や決済ポイントがかなりタイトなケースもありその使い方には限界があります。

それに対して環境認識は、相場全体から損小利大の絶好ポイントを探すことに優れています。したがって手法だけでは発見できないようなすぐれたポイントからのエントリーも可能です。

従って、両者を組み合わせた

環境認識+手法=最強の損小利大トレード方法と言えます。

まとめ

手法と環境認識の違いがよく分かって頂けたでしょうか。

よく、世間では勝てない方が多いと聞きますが、よくよく話を聞いてみると手法コレクターで手法ばかりを集めている方達と環境認識を気にもしていない方達です。

環境認識を知らずに手法だけで勝てるほど相場は甘くありません。

しかし、相場環境を制すれば手法も水を得た魚のように縦横無尽に使いこなすことができるようになり、損小利大のトレードの量産も十分に可能となります。 きっと、あなたがいままで買い集めてきた手法も環境認識と組み合わせることにより使いこなせるようになるでしょう。